ロザンヌ・ロザンナダナのライブだった。
“走る”クリス日記の“走る”の冠を維持するためにも走ってからライブに行く予定だった。
リハーサルは無しのはずでウチでゴロゴロ本を読んでいたら大地から電話。
リハーサルをやると言う。
カミジパパはお仕事なので2人でリハーサル。
世界は走らないための言い訳に満ちあふれている。
東京マラソンが当たっていたらリハーサルと本番の間にでも走っていただろう。
昨日のライブにはいくらかの個人的な反省点があった。
自分でもわかっていることだが俺の演奏は“クサい”。
いい言い方をすれば“感情表現が豊か”とも言える。
俺はそう解釈して得意になってやっているところがある。
単純に極端にピアノ・フォルテやクレッシェンド・デクレッシェンドを表現しているだけなのだが。
曲に慣れたりすると暇つぶし的に表現したりもしてしまう。
もちろん俺の勝手な解釈で。
そんなに間違った解釈はしてないし、ダイナミックスのレンジもバンドによって心得ているつもりだった。
例えばミサイル兄弟だとダイナミックスの幅は狭い。
昨日のライブは完全アコースティックセット。
大地は全曲アコースティックギターで演奏。
エレクトリックギターでやっていた曲もアコースティックアレンジにしていた。
練習では淡々とあわせていたので特に問題はなかったのだが。
ライブでちょっとだけ感情を注入したのが大失敗になってしまった。
4小節のサイクルの中でダイナミックスをつけたり。
アコースティックギターはエレクトリックギターほどダイナミックスのコントロールが容易ではないようだ。
大地は懸命に演奏するだけなのだが。
俺と大地のあいだに立ったカミジは難しい立場になってしまったようだ。
終わってからやんわりクレームが。
俺もやりながらもコレはちょっとなあ?
とは思っていたのだ。
サイズが決まってなくて盛り上げてから次の転開にってところで。
“えっ!お前の盛り上げそこまで?”なんてところも何ヶ所かあった。
調子に乗って感情注入すればいいってものじゃないようです。
ある意味サービスの向上なのかもしれないが。
最近のライブハウスでは店の女の子がいろんなタイミングのキューを出す。
可愛い女の子にケアーされる気分は悪いものではないが。
少々鬱陶しい。
“俺はおそらくアナタの生まれる前からこんな店で演奏している。
アナタ出すキューの10倍ぐらいの精度でタイミングを窺っています。”
そんな気分になってしまう。
可愛い女の子なので文句は言わないが。
男だったらバカヤロウ!だ。
ライブ前におふくろから電話があった。
ニュースを見て俺が解雇されて住む家も追い出されているのではと心配していた。
今のところは大丈夫だし。
住む家を与えられているほどいい待遇ではないと答えた。
製造業での派遣社員の解雇がニュースになっているようだが。
建築とはずいぶん様子が違うようだ。
俺が解雇されてゼネコンに文句言っているような感じに思える。
ありえない。
俺たちは建物が完成するたびに解雇されているようなものだ。
ニュースの中に派遣の会社が出てこないのも気になる。
派遣会社って実体はないのか。
追い出される社員寮にしても派遣会社が所有している寮なのか元請けの会社の寮なのかも定かではない。
おそらく同じところでずっと働いていると自分の立場の感覚が麻痺してくるのだろう。
ウチの会社で解雇されたメルセデスお掃除おばちゃんもそうだった。
自分がどこの会社の人間なのかがわからなくなっていた。
前の会社で出向に行っていた人も会社が倒産した時に“わかってるんですか!明日から現場に入れないってことなんですよ!”と社長に詰めよっていた。
正直いってバカ丸出しだと思ったが。
長いことひとつの“場”にいて“場”は健在にもかかわらず自分だけが暴力的に排除されるのは堪えられないことなのかもしれない。
たとえその“場”が幻想だとしても。
おそらく製造業の派遣会社は子会社的な存在で雇用調整に対するリスク管理が甘い状態だったのだろう。
昨日はトヨタ。
今日は日産。
明日はホンダ。
マツダの朝礼長いんだよ!とか。
スズキの安全大会はなんの景品もなし!とか。
スバルの焼き肉大会発泡酒だよ!とか。
そんな愚痴を言ってるような状態ではないのだろう。
仕入れを調整するような人員調整。
建築業界では当たり前の行為も製造業には向かないのかも。
しかしゴンの発想は違っていた。
ゴンの考えではこの不況はそんなに長くは続かないと予測していた。
企業の反応があまりにも迅速でインパクトは大きいが。
今まで何年もかかってやっていた人員削減を一瞬で。
業績の回復は早いと予測していた。
仕入れ調整のような人員調整のおかげで。
解雇される方はたまったものではないだろうが。
もともとそんな立場なのだ。
いくら生活が厳しいとは言え。
解雇されて引っ越しするお金もないと言うのはいかがなものか?
いろんな事情があるのかもしれないが。
まともなオトナだとは思えない。
なにか身の丈にあわない贅沢でもしているのではないか?
寮の部屋には巨大なワインセラーがあったりして。
高級ワインはすべてクール便で運ばなくてはならない。
だから引っ越しにお金がかかるのか。
ライブの打ち上げにコム・フォーに行った。
ずっとビールを飲んでいたが。
一杯だけワインをのんだハウスワインだ。
オーストラリアのイーグルホークだったか。
カベルネ・ソーヴィニヨンだ。
閉店まで飲んでしまった。
みんなにクリスマスカードをくれた。
女の子たちが大喜びしていたので店長のツバサ君も満足げだった。
そうだ、今日はクリスマスイブだった。
メリークリスマス!
今日の現場はフレンド学園。
あれはもう3年前になるのか?
俺を苦しめた現場だった。
完成したら解雇されるはずの建築業界なのに。
時々こういった雇用が創出される。
クリスマスイブを女子校で過ごす。
悪くない。
フレンド学園には悪そうな生徒はひとりもいない。
品のいい学校みたいだ。
警備の人まで感じがいい。
しかしクリスマスイブを俺と一緒に過ごすのはやっぱり小汚い下請けのオヤジだった。
またいいオヤジのくせしてデオドラント臭プンプン。
冬なのにデオドラント臭。
風呂入ってないな。
50代みたいだがオタクキャラも入っている。
仕事も出来るヤツ気取り。
まったくダメではないのだが。
“お前!そうやる!”
自信たっぷりだからまかせたら。
そうやる?
まったく間違いでもないし。
いいと言えばいいのだが。
そうやる?
全部やり直したかったが微妙なところでもある。
ヘソを曲げそうだしそのままにした。
やる気がないわけではないし。
出来ると言われたら出来る方なのだが。
微妙だ。
詰め所もなく休憩時間は外で寒さに堪える。
デオドラント・オタク・オヤジはワンセグでデカい音をさせて時代劇を見ていた。
必殺シリーズみたいだった。
微妙なオヤジと2人のクリスマスイブ。
昼飯は天空ラーメン。
